交通システムづくり:地方大都市宇都宮市のチャレンジ~複数の交通モード間の連結性を高める~

第2次宇都宮都市交通戦略

関東北部は自家用乗用車の普及率が最も高い地域である。(財)自動車検査登録情報協会によれば、2018年3月末時点、自家用乗用車の千人当たり台数では群馬県691台、栃木県671台、茨城県667台と、トップ3を関東北部諸県が占めている。こうした中、同地域で最大の人口を擁する宇都宮市(51.9万人、2018年4月1日時点)は、市内の交通渋滞の緩和と高齢化に伴う移動困難者の増加を見据え、「過度にクルマに依存する社会」から「公共交通とクルマが共存する社会」への転換を目指し、2019年2月に「第2次宇都宮都市交通戦略(2019年度~2028年度)」を策定した。

階層性のある効率的な公共交通ネットワーク構築

宇都宮市の交通戦略の主眼は、「階層性のある効率的な公共交通ネットワーク」の構築である。具体的には、清原工業団地などの工業集積地と人口密集市街地があるために朝夕の通勤時間帯に深刻な渋滞が発生している宇都宮駅東部地域の幹線に輸送力の優れたLRT(Light Rail Transit)を2022年3月から運行させる。LRTの導入と連動させてLRTを補完する幹線バス路線の再編整備を進め、同時に主要な施設間を連結する支線バスの整備を実施。さらに、現在郊外部の13地区15路線で運行している地域内交通(運営主体は地域住民組織で運行はタクシー事業者に委託、15路線中14路線がデマンド運行)の市街部での導入や自転車走行空間のさらなる拡充を進める(2015年の21.7kmから2020年には57.7kmに延伸)。そして、この複数の交通モード間の円滑な乗り継ぎを可能にするために、乗り継ぎポイントの拡充整備や交通結節点となるLRTの主要な停車場付近にトランジットセンター(乗り継ぎしやすい施設)の配置を進め、市域内の移動の密度を高めるとしている。同市はこうした交通ネットワークの構築により、市中心部と各拠点間の移動時間を2017年の平均47分を2028年には31分に短縮することを目指している。

宇都宮市の取組の今後に注目

宇都宮市のような人口30万~50万人の地方大都市は、合併時に郊外の中山間地など交通事情が異なる複数の地域を内包している場合が多い。このため、地域住民のニーズに適合した交通モードを導入しつつ、その相互間を効率的に連結させて市域全体として移動の密度をどのように高めていくかが課題となっている。マイカー依存度の高い地方大都市での今後のモビリティを考える上で、宇都宮市の取組みは要注目である。

参考)宇都宮市LRT

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