コネクティッドカーの今後のトレンドに関する考察
-最先端を行くBanmaユーザーへのインタビュー調査結果より、2つの仮説を検証-
Ⅰ.中国のデジタル化、コネクティッドカーの現状と、仮説の設定
1.中国では生活のデジタル化が日本人の想像を超えて進んでいる。電子商取引(EC)、モバイルバンキング、店舗での支払やタクシー予約、 デリバリー等、生活の多くの場面でスマートフォンの利用を中心にデジタル化が進行している。
図表① 日米中EC市場規模(BtoC)とスマートフォン普及率
出所:経済産業省、Consumer Barometer with Google
注)EC市場規模は2016年、スマートフォン普及率は2017年
2.クルマ選択もインターネットと融合したコネクティッドカーの関心が高まり、若者層を中心に支持されている。
3.中国EVベンチャーNIO等がコネクティッド機能標準装備化の動きを見せている中、アリババ-上海汽車のAliOS ベースのBanmaが注目され、Banma搭載のRoewe栄威の販売台数が伸び、特に「90后」の若者世代の購入者比率が2016年の17%から2017年には30%と増加している。
図表② 上海汽車とRoeweの販売台数推移2016-2018
出所:中国汽車工業協会CAAM、Banma
そこで今回、最先端を行くBanmaユーザーにインタビューを実施、スマートフォン(スマホ)との違いや、非コネクティッドカーにはない魅力を探索することで、下記の仮説検証を行った。
<仮説>
A.最新のコネクティッドカーはスマホの操作性を超える
B.コネクティッドは購入重視点の1つになる
Ⅱ.上記仮説に対するユーザーインタビュー調査の結果
仮説A検証結果:下記3機能に対する評価は高い
①ユーザーフレンドリーなナビシステム
・ナビ作動中も音声検索が可能
・施設をカテゴリで検出可能(例:体育館、トイレ)
・目的に合わせて4つの地図を切り替えて利用可能
(デフォルト画面地図、車友*地図、観光地図、グルメ地図の4地図)
・周辺駐車場自動検出、自動料金決済
*車友:他の車で一緒に出掛ける旅仲間
②指向性、反応等の精度が高い音声操作
・主・補助席を区別する音声認識
(例:「窓を開けて」というと坐る位置の窓が開けられる)
・呼び出しと指示の連続入力が可能
(例:「ニーハウバンマ、タバコ吸いたい」と連続で言うとサンルーフが僅かに開く)
③車両制御と安全管理に適するインターフェース
・道路救援サービスにワンプッシュで直結
・車両のメンテナンス状況の点数化
(どの部品、どんな状態、いつ交換必要かを表示)
・動画再生は時速40kmを超えるとブロック
仮説B検証結果:現状はまだ満足できる水準まで至っていないものの、今後のバージョンアップを期待
<インタビュー調査 結果要約>
「ユーザーフレンドリーなナビシステム」についてのユーザーの声
- スマホと比べてBanmaナビのいいところはナビ動作中にも音声操作で周辺情報を検索できる。
- グルメ、駐車場、トイレ、買い物、映画館、ガソリンスタンドなど声をかければ、検索してくれる。スマホではかなり面倒なのでやりたくない。
- ナビは基本的に車載器しか使わない。
- スマホより優れた点は音声操作の使いやすさだ。スマホはそんなことがスムーズにできない。
- 運転しながら、周辺情報を検索するのも、音声操作でできるし、検索結果を選択したら、そこに案内するようにナビが切り替わる。
「指向性、反応等の精度が高い音声操作」についてのユーザーの声
- 運転席から指令を出す最中に助手席の人が口を挟んでもほとんど影響なく、かなり賢い。
- 運転中に音声操作で必要な操作がほとんどできるから、ディスプレイをタッチする操作をやりたくない。
- 音声操作はかなり精度が高く、反応も早い。音声が使えるときは、基本的にタッチ操作はしない。
- 使いやすさや精度については85点を付けたい。
「車両制御と安全管理に適するインターフェース」についてのユーザーの声
- 車の状態は点数で評価してくれるので、どこがメンテナンスが必要かはわかる。
- スマホに比べて娯楽コンテンツは少ないが、安全運転に不要なサービスを省略し必要な部分に徹した姿勢が評価できる。
- いま自分の車の整備状況やメンテナンス履歴、スケジュールを表示してくれるので、いちいちメンテナンス手引きを調べる必要がなくなる。
Ⅲ.まとめ
1.調査結果まとめ
・音楽等エンターテインメント機能ではスマホには及ばない一方、下記3機能について、Banmaはスマホを上回る高い評価を受けている
<評価の高い3機能>
- ユーザーフレンドリーなナビシステム
- 指向性、反応等の精度が高い音声操作
- 車両制御と安全管理に適するインターフェース
2.調査結果に基づいた仮説の検証
Aの仮説検証
上記の3機能については明確にスマホより優位性があり、これら差別化技術の向上を図ることで、さらに魅力が高まる
Bの仮説検証
直ちに購入動機となり得る可能性は低いが、これら差別化技術の向上によりアーリーユーザーを満足させれば、一般ユーザーにも受け入れられる可能性がある
3.今後の示唆点
- この3機能は、いずれもクルマの運転を支援することを目的とする。例えば自動運転の姿をイメージできるような、近未来を感じさせる点が特徴であり、それはスマホにはマネすることのできないものである。
- 換言すると、コネクテッドカーの今後のトレンドは、あくまでドライバー目線で運転に必要な機能を重視しながらスマホより使い勝手の良い、未来志向のサービスを実現することにある。
- ただし本調査は、今回はわずか3人のBanmaユーザーへのヒアリング結果に基づく考察結果に過ぎない。客観的な分析に向け、他の地場メーカーのコネクティッド(例:吉利、BYD、長安、NIO等)との比較を含めためた定量調査等の実施による、さらなる検証が必要となる。
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参考1:インタビュー調査概要
- 調査対象 上海Banma2.0搭載車種ユーザー
- 具体手法 ユーザーインタビュー及び同乗、機能確認
- 被 験 者
・31才男性、既婚、サラリーマン
・26才男性、独身、不動産会社員
・25才男性、独身、コンサルタント (3名) - 実施時期 2018年12月(中国上海市)
参考2:Banma概要
- Banma(斑馬網絡)は2014年にアリババグループと上海汽車集団の合弁会社として設立されたスタートアップ企業。アリババのAliOSをベースに独自のインテリジェントコネクティッド車載システム「斑馬智行」を開発し、現在上海汽車の自社モデル以外の他ブランドモデルにも搭載
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株式会社 現代文化研究所 IoT/自動化/物流チーム(廖、原田、中野、岡田)