運送事業者の新型コロナウイルスの影響と対策
第4回「物流に関するアンケート」レポート
はじめに
- 新型コロナウイルス感染者数は昨年夏から秋口にかけ小康状態であったものの昨年12月に急増。今年1月には2度目の緊急事態宣言が発令され、3月現在も首都圏では緊急事態は続いている。
- こうした中、物流・運送事業者は新型コロナウイルスの影響を昨年以来受けており、With・Afterコロナの時代をどのように向かい合うのか不安を感じている事業者は少なくない。
- ここでは昨年7月に続き、昨年11月に行なった現代文化研究所の物流事業者モニターを活用したアンケート調査で、物流事業者のコロナ禍の中での取り組みや今後の考え方などについてまとめた。
Ⅰ.要旨
- 今回調査(11月)は、昨年7~9月の景気の持ち直しや感染者数の小康状態もあったことから、前回7月調査のような悲観的なトーンはやや薄らいだ。
- 今後の運送事業者の方針についても、自社配送や配送量を増やすなど積極的な姿勢を打ち出す。(ただし車両の整備については購入を見送るなどの慎重さも持つ)
- しかし、12月、1月の新型コロナウイルス感染者数の増加により、2度目の緊急事態宣言が発令。再び経済活動は制約され、景気悪化の懸念もある。
- 一方、こうした社会・経済状況は、ネット通販の貨物量の増加につながり、今後もネット通販を中心とした宅配貨物の取扱いが増えるとの見方も今回調査の回答で多数。
- 新型コロナウイルスの収束時期はまだ見通せず、先行き不透明な状況は当面続くとみられる。物流現場からの声をいち早く集め、今後の変化点を的確に発信してゆく。
Ⅱ. 仕事量の変化
外食自粛によりチルド・冷凍食品の取り扱いが増加
- 昨年10月現在の運送事業者の仕事量は、6月と比べ依然「減少」は増えているが、「大きく減少」が減少。また「変化なし」が増加。1回目の緊急事態宣言の解除後のような大幅な減少はない。(図表1)
注)前回調査は関東・関西圏のみのため、今回調査と前回調査の比較では、関東・関西圏のみ - また昨年10月に取り扱いが増えてきた商品は、「チルド・冷凍食品」「日用品・雑貨品」。特に「チルド・冷凍食品」は前回調査より増加。コロナ禍の自粛生活の中で、外食から内食・中食へのシフトが進んだものとみられる。(図表2)
Ⅲ. 車両の稼働状況
車両の稼働状況の大きな悪化はないが厳しい状況は継続
- 遊休車両台数は、3割の事業者が「増えた」とする一方、約6割の事業者は「変わらない」と回答。運行距離や稼働日数なども半数以上が「変わらない」としており大きな悪化には至っていない。
- 一方、車両の輸送効率については4割以上の事業者が、「減少」と回答。厳しい状況は続いている。(図表3)
- また車両の稼働状況を事業者別にみると小口運送事業者の「変わらない」回答率が長距離運送事業よりも高い。(図表4)
Ⅳ. 次年度の経営方針
21年度は攻めの姿勢も
- 事業者の来年度の経営方針には、攻めの姿勢も見られる。来年度の計画では「自社配送」「配送量」「ドライバー数」を増やす事業者が多くなってきている。(図表5)
- ただし次年度の車両台数については増やす意向は少なく、定期的な代替程度で大きな設備投資の意向は少ない。(図表6)
Ⅴ. アフターコロナの変化
コロナ禍後もネット通販商品の増加を予想
- 今回調査では、前回調査に比べ変化意識が高まっており、特に小口運送事業者の変化意識が顕著。コロナ禍による宅配貨物の増加を現場感覚で認識しているものと考えられる。(図表7)
- 具体的な変化の内容として「安全衛生が徹底した物流システムの導入」、「ネット通販業者商品の取扱い増加」が上位と前回と同様。次いで「自社配送の増加」「配送量の見直し」など。(図表8)
Ⅵ. 調査概要・本レポートの問い合わせ先
調査概要
本レポートの問い合わせ先
(株)現代文化研究所内『物流についてのアンケート係』
担当:藤岡 n-fujioka@gendai.co.jp
王 t-wang@gendai.co.jp
及び、サイト上部、下部のお問い合わせからお願い致します。
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