トヨタ自動車が月面探査に協力!

9月は中秋の名月である。今年は13日、金曜日であるが、東洋の歳時記に影響はないものと考えたい(何もないことを願う。純粋に月の美しさを楽しみたい)。月はどれほど歩いても同じような場所に見えるが、その距離は地球から384,400㎞、仮に時速100㎞で向かえば3,844時間、160日かかる。遠いのだ。

その月に、今年3月、米国ペンス副大統領は米国人宇宙飛行士を再び向かわせ、5年以内に月面に立たせると発表した*1。前回はスプートニク・ショックによる旧ソ連との競い合いであった。今回の宇宙開発の競争相手は中国である。

そして同月、ペンス副大統領の声明(26日)より2週間早く(3月12日)、トヨタ自動車とJAXA宇宙航空研究開発機構が、有人月面探査車(ローバ)の共同開発について発表している。また7月には16日付けトヨタ・ニュースリリースで「JAXAとトヨタ、有人与圧ローバの実現に向け具体的な共同研究に着手」とも発表。まず2019年から2021年にかけての研究内容等を示し、案として2029年の打ち上げを目指した構想の中で、2027年からフライトモデル(実機)の製作・性能品質検証を想定している*2。

3月報道の「ローバ」の仕様は「『マイクロバス2台分よりやや大きい』程度。全長6メートル、幅5.2メートル、高さ3.8メートル」*3とあり、イメージ画像をみると大型のミニバンにかなり大きめの車輪を付けたようなものに見える。

これをどのように製造、打ち上げるのか、大変興味深いところであるが、米国シリコンバレーのスタートアップ、Made in Space社が宇宙開発の効率的な実施に向け、打ち上げるのではなく、宇宙空間で必要なものを製造する、という取組みを進めている。同社は2010年頃からNASA米国航空宇宙局とパートナーシップを組み、まず無重力空間で機能する3Dプリンティング技術、続いてその施設、そしてクルマの生産ラインで活躍するようなアーム型ロボットが自動でパーツを組み立てる技術に統合した。同社によれば、現在、宇宙空間で最大の建造物はISS国際宇宙ステーションであるが、同社の技術なら宇宙飛行士等の人間の作業によらず、その数倍規模の衛星等を建設できるという(以上、同社ウェブサイト)。これなら月面での車両製造や建造物建設にも活躍しうるのではないか。

我が国の宇宙探査では小惑星探査機「はやぶさ2」の感動的なイメージが強い。一方、上空400㎞の高度にあるISS国際宇宙ステーションでも2019年は実験棟「きぼう」や補給機「こうのとり」の10周年アニバーサリー*4であり、そしてちょうど10年後の2029年がトヨタのローバが月面を走る。米国ペンス副大統領の計画より5年後であるが、そのときローバには誰が乗っているのであろうか。できうるなら、ぜひ月から地球を見てみたいものである。そしてそのときの地球が、今のように青いままであることを願う、というよりは水素等の環境技術でそれを守らねばならないだろう。

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出所

*1 報道ほか
*2 トヨタ自動車ニュースリリース
*3 報道
*4 JAXA websiteほか

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