カーシェアリングの誘引機能

2018年4月、小田急電鉄はタイムズ24と、カーシェアリングサービスの「レール&カーシェア」を開始した。これは、交通系ICカード「PASMO」を利用して小田急線の指定駅まで乗車後、当日中に駅周辺の指定の駐車場でタイムズ24のサービス「タイムズカーシェア(旧タイムズカープラス)」を会員カードで利用すると、同サービスの料金が自動で割引(206円優待)されるというもの。ちなみに、「タイムズカーシェア(同上)」の料金は、カード発行料が個人プラン1550円、学生プラン1550円、法人プラン648円、月額基本料金は個人プラン1030円(学生プラン、法人プランは無料)、利用料金はベーシックが206円/15分、プレミアム412円/15分となっている。

「レール&カーシェア」の利用が好調に推移したことから、小田急電鉄は2018年12月に指定駅数を開始当初の12駅から23駅に、車両台数は31台から58台に拡大した。同社によれば、平日のビジネスマンの業務用利用が多いとのことである。実際、タイムズ24のニュースリリース(2018年7月3日)をみても、タイムズ24の会員構成比は2013年4月では個人69.3%、法人30.7%だったのが、2018年4月には個人60.8%、法人39.2%と法人比率が4割近くに伸びている。同社はその理由として、鉄道駅など交通結節点への車両配備強化により、出張時等に利用する法人会員数が増加したことを挙げている。

こうした動きは、カーシェアリングが地域に人を誘引する機能を持っていることを示している。小田急電鉄は、2018年4月に発表した「中期経営計画」の中で、沿線まちづくりの具体的方策として、「沿線の魅力を牽引する『集客フック駅』と夜間人口の増加を目指す『くらしの拠点駅』に役割を分けて、まちの個性を引き立てる投資や仕掛けづくりを行う」としており、カーシェアリングの取組みは「産業・商業・文化等の豊かな地域資源を活用して昼間・交流人口を増やす」とする集客フック駅の機能強化の一翼を担っているといえる。

現在、地方都市では観光等による地域活性化の取組みを行っているが、鉄道などの幹線拠点から地域内へとつなぐ二次交通手段の不備が課題となっている。地域の価値を高めるには魅力ある地域づくりが大前提ではある。しかし同時に、その一環として、地域外から人を誘引して地域内の移動を円滑にする仕掛けづくりが重要であることを、小田急電鉄の取組みは示唆している。
(参考ページ:「小田急電鉄」と「タイムズ24」が“レール&カーシェア”で連携)

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